振り返りにつづる~VOICE SPACE~

遅くなってしまいましたが、11月16日の舞台を、振り返ってみます。
今回は、たくさんの写真とともに振り返ります。

まずは、当日、300人を越えるお客様にお運びいただいたことに、心の底から感謝の思いです。遠方からもたくさんおこしいただいており、本当に嬉しかったです。

リハーサルに訪れていた平日とは全然違う雰囲気。たくさんの方が、会場周辺にあふれていて、晴れ渡っていた空にも、心はわくわく。胸はどきどき…。

緊張感あふれる会場に、まず初めに私が登場したのは、中原中也の『秋の一日』。作曲は中村裕美さん。いつも思うのですが、彼女の作る曲には、魅力的な「間」があります。ぐっと引っ張ってよし、縮めてよし…。邦楽に生きる私には、それがとっても快感なのです。

共演したのは、ソプラノの小林沙羅さん。裕美さん同様、彼女とも、もう10年近くの音楽仲間です。歌声は伸びやかさを増し、大空を自由に羽ばたくようにも聴こえ、共演者を、鮮やかに引っ張っていってくれます。

チラシにあった「波止場に出でて、今日の魂に合ふ、布切屑(きれくず)をでも探して来よう」は、この詩『秋の一日』の一節です。「間」という綱の引き合いをしながら、あっという間に終わりました。これは、是非また再演したいです。

次に登場したのは藤原安紀子さんの詩『アナ ザ ミミクリ』、作曲は小田朋美さん。奏者八名の誰の手にも、楽器はなし。全員声と、時には手拍子足拍子のみで構成されています。

超緊張!なぜなら、詩に納められた言葉?いや単語?が、それこそ10秒の間に、複数の奏者に、担当が割り当てられています。だから、一人がうっかり入り忘れると、自分どころか、周りに与える影響が恐ろしいのです。例えば「み つ け て」という言葉を、四人が一語ずつ、しかも、リズムの中に当てはめて言うのです。考えただけで怖いでしょう?でも、それがうまい具合に入ると、全員のテンションは、確かに上がるのです。

この演目の披露は二度目、若干メンバーは入れ替わっているものの…。これも、またやりたいですね。小田さんの曲には、激しく変化するようなリズムが込められていることが多く、毎度反射神経を鍛えられています。でも時には、綾を織り成したような和音も登場していたりします。

一部の最後は、もう三度目の演奏でした、暁方ミセイさんの詩『リビング』、作曲は中村裕美さん。弾いて吹いて読んで歌って。出演者12名全員が、音と声を押し出すような…。とにかく豪華な音構成です。ここ2年のVOICE SPACEの舞台を観てくださっている皆さんには、もうおなじみのステージですね。きっとすごい音圧だったのでしょうか、終わると、いつもに増して、迫力の拍手を頂くのです。

ふと思うのは、この曲のスコア譜って、どれだけ分厚いのだろうかということ。演奏者も、楽器を弾いていた次の瞬間には声を飛ばさなければいけないので、きっと楽譜は相当に複雑なんだろうなぁと想像しています。(私は、自分のパートだけ、作曲者に音を弾いてもらって、自分だけの、点字パート譜を作るだけなのです)

二部は、宮沢賢治の、物語と詩の世界を、『おれはひとりの修羅なのだ』と題して、六演目の構成で演奏しました。賢治の世界には、彼にしかない音があちらこちらにちらばっていて、私はいつも頭の中に、もう一つ、森のような、広い草むらのような世界を描きながら演奏しています。途中、仮面をかぶって演奏しているのは、ゴーシュと楽団のシーンです。仮面はすべて、ShiShi Yamazakiさんデザインによるものです。

アンコールの最後は、佐々木幹郎さんの『明日』(曲:VOICE SPACE)でした。

というわけで、ざざっと、私のノリ番とともに振り返ってみました。
写真は深堀瑞穂さんです。

本当にありがとうございました。  こころね